棚田・里山林が必要な理由

棚田が必要な理由

棚田は一つの特徴的な機能のみではなく、人や環境によって様々な多面的な機能があります。

食糧生産機能」「水源涵養・保水機能」「国土保全機能」「生物多様性・生態系保全機能」などがあげられます。

○食糧生産機能

おいしいお米を作ります。

  1. 平坦地の水田に比べ昼夜の温度差が大きいため、稲がゆっくりと熟す。
  2. 水源に近いため、水の中に微量元素を多く含み、また汚れが少ないこと。
  3. 土地が狭いのでコンバインで収穫・脱稿して籾を機械乾燥できないため、籾がついた稲束をはさ掛け(天日乾燥)にすることが多く、ほどよく乾燥する。

この食料生産が高齢化、後継者不足、経済性悪化などで休耕棚田が増えています。

しかし、棚田には生産以外に大切な役割りがあります。

○水源涵養・保水機能

豊かな水資源を貯えます。

日本の水資源が豊かなのは、森林や棚田の保水機能があるからだといわれています。

日本はたくさんの雨が降りますが河川が外国に比べて滝のような急傾斜で国土の70%を占める山地に降った雨は自然のままだと、すぐに海へ無駄に流れてしまいます。

しかし、日本は森林の保水力に加え、多くの棚田が溜池や用水路などの灌漑施設を経由して水を貯え、その水がゆっくりと河川に戻ったり、浸透して地下水となったりして私たちが利用する水が常に国土に保たれているのです。

○国土保全機能

地すべり防止、土砂崩壊防止、土壌浸食防止

棚田は地すべり地帯に拓かれることが多く、新たな「地すべり」や「土砂崩れ」の防止をするといわれます。

地すべりは厚い粘土層に覆われた山間傾斜地などで、雨水が地下に浸透して発生します。

棚田は田起こしや代かきなどの作業によって耕盤と呼ばれる土層をつくり、地下への浸透水を減らします。

棚田が耕作放棄されると耕盤が乾燥して亀裂が生じ、雪解けや大雨のときなどに大量の水がこの亀裂から地下に浸透して地すべりを誘発することがあります。

また、棚田は水を溜めるために水平にして畦畔を設けます。

これが海外の山なりの耕作地に深刻な被害を及ぼしている「土壌浸食」の防止につながっているとも考えられます。

○生物多様性・生態系保全機能

豊かな動植物を育みます

平地の大きな田んぼでは、コンクリート製の近代的な用水路と排水路が別々に作られていることが多く、水の流れは一方通行で、一旦排水路に流れ出た水は同じ田んぼに再び戻ることはありません。

これに対して、棚田地域では用水と排水を兼ねた水路や、土で作られた水路や畦畔が残っていて、生き物が成長に応じて田んぼと水路を行ったり来たりすることが可能です。

また、溜池や湿田などの水溜りも多く、周囲の自然環境との補完性、水質の良さなどの理由から、多種、多様な小動物、昆虫、植物が複雑な生態系を築き上げているのです。

里山林が必要な理由

「里山林」とは、居住地域の近くに広がり薪炭用材や落ち葉の採取などを通じて、地域住民に継続的に利用されることにより維持管理されてきた森林のことをいいます。

一般的には「雑木林」ともいわれコナラなどの落葉広葉樹林、常緑のアカマツ林のほかスギ、ヒノキなどの人工林、竹林を含む様々な種類の樹木から構成されています。

「里山林」は人が手を入れながら管理してきた二次林の代表といえる森林です。

炭や薪にするために樹木を伐り出したり、水田や畑に使う肥料として落ち葉を取り出すなど生活に必要な材料を得ながら維持・管理されてきました。

昭和30年代に石油やガスなどが普及し、化学肥料の利用が広がるなど私たちの生活の仕方が変わるにつれ、次第に里山林は利用されなくなり、放置されるようになって来ました。

里山林には、数多くの種類の動植物が生息していて、自然の営みを繰り広げています。

また、春の新緑や秋の紅葉など四季折々に美しい景観を見せてくれる場所でもあります。

私たちの身近な里山林が自然とふれあう場、緑が心にうるおいをもたらす場、生物多様性を守る空間として、評価され始め、人との豊かな関係を回復・創出する場として期待されるようになりました。

 

生駒の里山林は概ねコナラ林が中心です。

現在のコナラ林は1940年〜1960年代にかけて最後の伐採を受けた後、放置されたもので林齢が40〜60年代生が中心です。

以前は15〜30年といった短い間隔で伐採され、樹高も低く小径の若いものでした。

現在は放置に伴って高齢化や大径化が新しく「ナラ枯れ」という病害を招いているのではないかと心配されています。